SUVとクロスカントリー4WDとクロスオーバーSUV

SUV

自動車雑誌を見ても「SUV」、Webサイトを見ても「SUV」、テレビCMを見ても「SUV」ととにかく現在の自動車界は「SUV」にあふれています。
SUVとはどういうものか?というのはこちらのページ「本当の「SUV」ってどんな車?」を見ていただければわかると思いますのでここでは挙げませんが、この「SUV」という言葉は自動車メーカーに取って、メディアに取って非常に都合のいい言葉であるようです。

この2台、同じジャンルの車?

例えば、正真正銘のSUVである「ランドクルーザー・プラド」・・・

数少ない国産SUVのランドクルーザー・プラド

数少ない国産SUVのランドクルーザー・プラド

  • ハイラックス譲りのラダーフレーム
  • コイルリジットのリヤサスペンション
  • パートタイム4WDベースのセンターデフ付きフルタイム4WDシステム
  • 大型ボディによる優れた積載能力
  • ディーゼルエンジンを含めた大排気量エンジン

を「SUV」として呼ぶのに対して、マツダの「CX-3」・・・

デミオベースのクロスオーバーSUV CX-3

デミオベースのクロスオーバーSUV CX-3

  • デミオと同じプラットフォーム、シャシー、ボディの一部を利用
  • デミオと同じマクファーソンストラット+トーションビームといったサスペンション
  • FFモデルがメインで、4WDモデルの4WDシステムはスタンバイ4WDの生活四駆
  • 大衆コンパクトカーと同じなのでほとんと荷物が積めない
  • 2リッターガソリンエンジンと1.8リッター(1.5リッター)ディーゼルエンジン

もマツダや世間一般では「SUV」と呼んでいます。

エンジン排気量と販売価格が大きく違うので「クラス」や「車格」は全く違うもの同士であることは明確ですが、両車とも同じ「SUV」というジャンルに属しているというのが自動車メーカーやメディア、一般大衆の概念であるようなのです!

これはかなりの驚きです・・・まるで大衆車の代表モデルである「カローラ・アクシオ」とラグジュアリーモデルである「クラウン」を同じジャンルの車としてみているかのようです。

高級セダンのクラウンと大衆セダンのカローラ・アクシオ

高級セダンのクラウンと大衆セダンのカローラ・アクシオ

これは明らかにおかしいことですし、ランドクルーザー・プラドは「SUV」ですが、CX-3は本来「クロスオーバーSUV」というカテゴリーに属するモデルなので、まったくの別扱いをするのが正しい扱い方です。

どうしてこういったことが起こってしまうかというとそれにはいろいろな理由があり、それだけでかなりの文字数となってしまいますので、詳しくは別のページ「クロスオーバーSUVをSUVといいたがる理由」でお話させていただきますが、「SUV」という言葉自体がかなり勘違いされているのは確かです。

SUV・クロスカントリー4WD・クロスオーバーSUVは全く違うカテゴリー

昨今の風潮を見ると・・・

  • 車高が高くホイールアーチとタイヤの隙間がスカスカであること
  • 大径タイヤを履いていること
  • ボディ下周りにアンダーガード風の樹脂製エクステリアパーツがついていること
  • ルーフにルーフレールがついていること
  • 自動車メーカーが販売戦略上「SUV」として売り出していること

といった車のことを総じて「SUV」と呼んでいるようですが、この風潮を正しいとするのであれば世の中から「クロスカントリー4WDモデル」や「クロスオーバーSUV」と呼ばれる車が存在しないことになります。

SUV」「クロスカントリー4WD」「クロスオーバーSUV」・・・確かに見た目的には似ていますが、構造や目的、性能などがそれぞれで全く違います。
ではここで「SUV」「クロスカントリー4WD」「クロスオーバーSUV」がそれぞれどういった車なのかを復習してみましょう。

SUV

SUV キャデラック・エスカレード

アメリカ車でも数少なくなったSUV キャデラック・エスカレード

SUVにつきましては別ページ「本当の「SUV」ってどんな車?」で詳しく述べさせていただいておりますのでここではざっとご説明させていただきます。

SUVは「Sports Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)」の略で、アメリカでピックアップトラックをアウトドアスポーツに出掛ける時に使ったことが始まりの車で・・・

  • ピックアップトラック譲りのラダーフレームを持つこと
  • ピックアップトラック譲りの優れた積載能力を持つこと
  • 多少なりともオフロード走行が伴うため、それなりのオフロード走行性能を持つこと

といった3つの定義を満たした車のことを言います。
現在のいわゆる「SUV」と呼ばれる車を見る時に重要なことは、その車にラダーフレームが使われているかどうかというところです。

もしその「SUV」と呼ばれる車にラダーフレームが採用されておらず、モノコックフレームが使われていたり、モノコックフレーム使用の車体を流用した形で作られていたりするといった場合はその時点で「SUV」ではなくなります。

クロスカントリー4WDモデル

クロスカントリー4WD ジムニー・シエラ

貴重な国産クロスカントリー4WDモデルの1台 ジムニー・シエラ

クロスカントリー4WD」の目的は道なき道のような非常に路面状態が悪いところを走ることです。
そのためには・・・

  • 頑丈で捻じれてもすぐに戻る剛性の高いラダーフレームを使用すること
  • パートタイム4WDシステムやセンターデフをロックすることができるフルタイム4WDシステムを持っていること
  • いかなる路面にも対応でき、ストローク量の多いリジットサスペンションをもつこと
  • ロードクリアランスがたっぷり取られていること

などといったことが車作りが採用されていなければなりません。
これが「クロスカントリー4WD」と呼ばれる車の典型ですが、一見すると「SUV」とかなり似た点があり判断が難しい一面もあります。
ただ「クロスカントリー4WD」と「SUV」は、使用目的が全く違いますし、その目的に伴ってオフロード走行性能の優劣がありますので、よく見て、よく調べてみれば意外と簡単にわかります。

    ※クロスカントリー4WDモデルは・・・
  • ●目的:オフロードを走破すること
  • ●オフロード走行性能:優れていなければならない
    ※SUVは・・・
  • ●目的:アウトドアスポーツをする場所に人や荷物を運ぶこと
  • ●オフロード走行性能:オンロード走行も考えた適度なもので十分

と大きく異なります。
もちろん「クロスカントリー4WD」の中にかなり「SUV」に近い位置にいるものもありますし、「SUV」の中には「クロスカントリー4WD」と対等にオフロード走行ができるモデルもありますが、基本的な概念や違いはこういった形となります。

クロスオーバーSUV

クロスオーバーSUV CX-5

典型的なオンロード向けクロスオーバーSUVのCX-5

クロスオーバーSUV」も別ページの「クロスオーバーSUVが生まれた理由」で詳しくご説明させていただいておりますのでここでは詳細については省きますが、簡単いってしまえば自動車メーカーが「SUV」を作ろうとした時に既にラダーフレームの生産をしていなかったことから既存のモノコックフレームを使ってSUV風の車を作ったという形で作られた車のことを言います。

要するに・・・

「クロスオーバーSUV」=「SUV」-「ラダーフレーム」

ということです。

C-HRのモノコックフレームとランドクルーザー・プラドのラダーフレーム

C-HRのモノコックフレームとランドクルーザー・プラドのラダーフレーム

これが基本概念ですが、現実的にはもっとマイナス要素が多いものがほとんどで・・・

  • ×FFモデル(二輪駆動)しかない
  • ×サスペンションがチープなトーションビームである
  • ×車高が高いだけでサスペンションストロークが少ない
  • ×荷物がほとんど積めない
  • ×オフロード走行性能がないに等しい
  • ×既存モデルの使いまわしで作られている
  • といったモデルがたくさん売られています。

    カテゴリーの分類が間違いを引き起こす

    見た目的にはそっくりな3つのモデル、これだけの相違点があるのですからすぐに違いがお分かりになったと思います。
    しかし、車に縁遠い人、見た目だけで車を判断する人、車なら何でもいいと思っている一般大衆の方々の中にはこれでも理解いただけないことが多々あります。

    実はその理解できない原因もある程度わかっていて、その1つに自動車メーカーやメディアなどが販売戦略や忖度などを踏まえたうえで作られたカテゴリーの分類が間違っているという点があります。

    自動車メーカーやメディアで作られた間違ったカテゴリーの分類としては・・・

    間違ったカテゴリーの分類

    間違ったカテゴリーの分類

    と「SUV」という大きなカテゴリーの中に本来のSUVだけでなくクロスカントリー4WDモデルやクロスオーバーSUVが下位カテゴリーとして置かれている、含まれているとなっているようですがこれは間違いです。
    正しくは・・・

    正しいカテゴリーの分類

    正しいカテゴリーの分類

    といった形でSUVはSUV、クロスカントリー4WDモデルはクロスカントリー4WDモデル、クロスオーバーSUVはクロスオーバーSUVといったように独立したカテゴリーとして分類されるべきなのです。
    なぜなら前述しました通り、3つのモデルは構造、目的、用途が全く違う車同士だからです。

    このように間違った概念が広まってしまったことから「クロスオーバーSUV」を「SUV」と呼んだり、「クロスカントリー4WD」を「クロスオーバーSUV」と同じジャンルの車としてみる風潮が出来上がってしまうわけですが、これは消費者の誰が悪いわけではなく、自動車メーカーや販売店、そして自動車メーカーを怖がるメディア、ジャーナリスト、自動車評論家など発言力のあるに責任があります。
    なぜならそういった人間が間違った発言をしたり、文章を書いて公表したりするからです。

    SUV・クロスカントリー4WD・クロスオーバーSUVの正しい分類(国産車)

    2019年1月現在、国内発売されているモデルの中で間違って「SUV」とされてしまっているモデルも含めてここで改めて、「SUV」「クロスカントリー4WD」「クロスオーバーSUV」を正しく分類しておきましょう。

    メーカー カテゴリー 該当車種
    日産
    SUV 該当なし
    クロスカントリー4WD 該当なし
    クロスオーバーSUV ジューク、エクストレイル
    三菱
    SUV デリカD:5
    クロスカントリー4WD パジェロ(かなりSUV寄り)
    クロスオーバーSUV アウトランダー、エクリプスクロス、RVR
    トヨタ
    SUV ランドクルーザー・プラド、LX
    クロスカントリー4WD ランドクルーザー
    クロスオーバーSUV アクア・クロスオーバー、C-HR、ハリアー、RAV4、NX、RX、UX、ピクシスジョイ
    ホンダ
    SUV 該当車種なし
    クロスカントリー4WD 該当車種なし
    クロスオーバーSUV CR-V、ヴェゼル
    マツダ
    SUV 該当車種なし
    クロスカントリー4WD 該当車種なし
    クロスオーバーSUV CX-3、CX-5、CX-8、フレアクロスオーバー
    スバル
    SUV 該当車種なし
    クロスカントリー4WD 該当車種なし
    クロスオーバーSUV XV、レガシィ・アウトバック、フォレスター
    スズキ
    SUV 該当車種なし
    クロスカントリー4WD ジムニー、ジムニーシエラ
    クロスオーバーSUV ハスラー、クロスビー、イグニス、SX-4 S-CROSS、エスクード
    ダイハツ
    SUV 該当車種なし
    クロスカントリー4WD 該当車種なし
    クロスオーバーSUV キャスト・アクティバ

    まとめ〜「SUV」「クロスカントリー4WD」「クロスオーバーSUV」は似て非なるもの

    自動車メーカーの販売戦略、メディアの間違った認識、それを利用する消費者の知識によって同一視されがちな「SUV」「クロスカントリー4WD」「クロスオーバーSUV」ですが、このページを見てそれが間違いであったことがお分かりいただけたかと思います。

    ここで自動車メーカーの販売部門やディーラー、自動車部品メーカー、カー用品店、そしてメディアの方に1つお願いがあります。
    こういった間違いや混乱が起こらないようにこれからは周りに左右されることなく、利益に目がくらむことなくちゃんとしたカテゴライズをし、正しい言葉で車たちのことを表現してあげてください。
    いずれはお客様となりうる消費者のために・・・

    時すでに遅し!C-HRをSUVだと勘違いして買ってしまいました。

    こういう方も結構多いのでは?
    確かにプリウスのなんちゃってクロスオーバーSUVであるC-HRをSUVとして乗り続けるには我慢が付きまといますし、ハイブリッドモデルですとフラットなオフロードや雪道でも路面の振動で早々にハイブリッドシステムが壊れてしまうことでしょう。(これ本当です!)
    新車保障が使えればいいですがそうでない場合は50万円越えの大出費です。

    それを避けるためにはすぐに乗り換えるのが一番、「スマホで撮るだけ、車が売れる DMM AUTO」ならすぐに自分の車の価値がわかり、次の車を購入資金計画ができると思いますよ。

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    • カー・エクスポーザー
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    • 自動車評論家@ダークサイド

    発言に対する制限が掛かるのを嫌うため現在はどの団体にも属さないフリーとして活動。
    Webサイト用記事、ゴーストライターとしての記事などを多数執筆

    いわゆる自動車評論家やモータージャーナリストなどが忖度などの理由からはっきり言えないことをズバズバと発言し、自動車業界の裏の真実を暴露する。
    また、自動車メーカーやメディアが何らかの理由で公言していることによって生まれた間違った風潮・知識、言葉の使い方、言葉の解釈に苦言を呈する。

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