クロスオーバーSUVが生まれた理由

クロスオーバーSUVが生まれた理由

別ページ「本当の「SUV」ってどんな車?」「SUVとクロスカントリー4WDとクロスオーバーSUV」を見てお分かりのように、日本国内で国産自動車メーカーが製造・販売している「SUV」のほとんどがSUVでないことが理解できたと思います。

どうして「クロスオーバーSUV」を「SUV」とするのかは別ページ「クロスオーバーSUVをSUVといいたがる理由」をご覧になっていただければよいかと思いますが、その前に「クロスオーバーSUV」というひとつのカテゴリーが作られた理由を見ていきましょう。

理由その1:自動車メーカーの現実問題

そもそもクロスオーバーSUVというのは自動車メーカーが「SUV」を作ろうとした時に現実的な問題で完全なるSUVとしての形態、構造を取ることができなかったことから生まれたもので、いわば妥協策を具現化したものです。

SUVを作るには、エンジンやトランスミッション、4WDシステムを考える前にまずはラダーフレームとそれに載せるためにボディ(キャビン)を用意しなければなりません。

ラダーフレーム

ラダーフレーム

大手自動車メーカーは1950年代中盤あたりから乗用車向けフレームをそれまでのラダーフレームからモノコックフレームに移行し始め、現在では95%ぐらいの割合でモノコックフレームを使った乗用車を作るようになりましたので、当然ながらSUVを作るためのラダーフレームが用意できません。
それこそ現在わずかにある乗用車用ラダーフレームや輸出向けピックアップトラックのものを流用するするか、開発コストをかけて新たにラダーフレームを作り直すしか新たにSUVを作ることができないのです。

これを実際の国内自動車メーカーが発売するモデルに該当させてみると・・・

トヨタ ランドクルーザー・プラド 輸出向けピックアップトラックに使用しているラダーフレームを流用
トヨタ LX クロスカントリー4WDモデル ランドクルーザーのものを流用
三菱 デリカD:5 ラダーフレームとモノコックフレームを結合させたフレームを開発
国産SUV 3車種

左:三菱デリカD:5  中央:トヨタランドクルーザー・プラド  右:トヨタLX

といった形で3種類のSUVが作られていて、先ほどのパターンでいえば「ランドクルーザー・プラド」は前者のパターン、「LX」と「デリカD:5」は後者のパターンとなります。

しかし、残念ながらSUVの正当な作り方をしてそれを商品化しているのは、先ほどのトヨタの一部の車種と三菱の一部の車種だけで、それ以外のモデルや自動車メーカーでは流用することも新たに作ることもせずに、手間をかけずにそれでいて低コストで作ることができる既存のモノコックフレームの流用という手段を取ったのでした。

SUVはラダーフレームがなければ成立しませんので「SUV」ということはできません。
しかし、それでは商売としてはデメリットになるわけですので 、既存の乗用モデルのモノコックフレームとSUVらしい装備の融合、もっと具体的にいえば「ハッチバックワゴンやステーションワゴンなど乗用車」と「SUV」をクロスオーバー(異なる分野の物を組み合わせて新しい物を作り出すこと・融合)させたという形にして

「ラダーフレームを使っていない」

という欠点・妥協点を「クロスオーバーSUV」という言葉で、作り方でスポイルしようとしたのです。

「クロスオーバーSUV」=「SUV」-「ラダーフレーム」

まさにこれがクロスオーバーSUVが作られたおおもとの理由です。

理由その2:クロスオーバーSUVブームにいち早く乗るため

自動車業界だけでなくいろいろな業界においても「流行り廃り」いわゆるブームというものがありますが、それが訪れるスピード、去っていくスピードはかなり速く、そのブームに乗れるか乗れないかで商品の販売数が大きく変わってくるものです。

自動車界においても2019年現在のところ「SUVブーム」・・・いや正確にいえばモノコックフレームを持つ「クロスオーバーSUVブーム」が巻き起こっており、どの自動車メーカーにおいてもそのブームいち早く乗るために日夜、開発や設計を行っている次第です。

SUVブーム イベント

各地で行われているSUVのイベント

そんな中で、1台の本当のSUVをつくろうとした時にラダーフレームがないので最初から作るとか、既存のモノコックフレームをつかったプラットフォームを流用するにしてもSUVらしくするために色々を手を加えたりしていては時間がかかりすぎてしまい開発設計が終わって、いざ生産段階に移った時には既にブームは去っていた・・・なんてことになりかねません。 そこで自動車メーカーは考えました・・・

「これまでも結局は既存モデルを使って新しいモデルを作ってきたのだから、SUVも同じように既存モデルを使って作ってしまえばいいではないか!」

これなら1から開発をした新型モデルを作って売るより1/10ぐらいの手間と時間とお金で新しいSUVらしい車を作ることができます。
ただ、流用のベースとなるモデルのほとんどがモノコックフレームを持つものであることから自然と「SUV」ではなく、「クロスオーバーSUV」として販売するしかないわけです。

まとめ〜クロスオーバーSUVは妥協策

クロスオーバーSUVはSUVを作りたいが何かしらの理由で作れなかったことの結論として生み出された車です。
クロスオーバーSUV」などとかっこいい名前が付けられていますが、この「クロスオーバーSUV」という名称に含まれる「クロスオーバー」という文言は、「融合」という本来に意味でとるのではなく、「妥協」ととらえるのが妥当といえるでしょう。

そして混同されやすい「SUV」とも別物であるということも理解しておくべきです。

やっちゃった!騙されてクロスオーバーSUVを買っちゃった

こう思った方もきっと多いことでしょう。

もちろん最初からクロスオーバーSUVであることを知った上で買った方もいるとは思いますが、クロスオーバーSUVオーナーの95%は、自動車メーカーやメディアが言うことを信じてSUVだと思って購入しているそうです。
ならばどうしたりいいか・・・

  • あいつは車を知らないヤツだ!
  • 車好きが聞いてあきれるぜ

などと言われて恥ずかしい思いをする前に急いで買い替えた方がいいかもしれません。
そこで役立つのが以下の2つのお店・・・

  • 車がまだ新しく価値がつく場合・・・買取店
  • 車に価値がつかないほど古い、あるいはボロボロな場合・・・廃車買取店

この店舗のどちらかで間違って買ってしまったクロスオーバーSUVを売り払って、それを資金にして、SUVや他のモデルを買った方がいいのではないでしょうか?

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執筆者・管理者

  • カー・エクスポーザー
  • 自動車酷論家
  • 自動車評論家@ダークサイド

発言に対する制限が掛かるのを嫌うため現在はどの団体にも属さないフリーとして活動。
Webサイト用記事、ゴーストライターとしての記事などを多数執筆

いわゆる自動車評論家やモータージャーナリストなどが忖度などの理由からはっきり言えないことをズバズバと発言し、自動車業界の裏の真実を暴露する。
また、自動車メーカーやメディアが何らかの理由で公言していることによって生まれた間違った風潮・知識、言葉の使い方、言葉の解釈に苦言を呈する。

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