本当の「SUV」ってどんな車?

SUV

1990年代中盤あたりから少しずつ人気が出始めて、今や発売される新型モデルのほとんどが名乗るようになってきた「SUV」という用語、この用語ほど広く間違って使われている言葉はありません。
一般消費者のみならず一番正しくなければならない生産元である自動車メーカーまで間違った使い方をしているのですから驚きです。
その間違いを正すべく、まず「SUV」がどういう車なのかということを説明していきましょう。

SUVの生い立ち

SUVとはその生い立ちからおのずと決められしまう3つの定義を満たした車のことを言います。
ではその生い立ちを振り返ってみましょう。

日本人にはちょっと理解できない部分があるかと思いますが、アメリカでは都市部以外の地方を中心に若年層がピックアップトラックを乗り回すということが「かっこいい」とされる自動車文化があり、それは今でも存在します。
分かりやすく日本人的に例えるのであれば、免許取り立ての若年層ドライバーが「ワゴンR」とか「ムーヴ」といった軽トールワゴンを好んで買うのと同じかもしれません。

ピックアップトラック

70年代のピックアップトラック シボレー・アパッチ

もともとは農場や牧場などで使っていたいわゆる仕事用の小型トラックをアメリカ人特有の合理性を求める考えから普段使いにも使うところから波及していったことなのですが、そういった中で若者たちが休みの日にキャンプとか山登り、スキューバダイビング、サーフィン、スキー、スノーボードなどといったアウトドアスポーツに出掛ける時に使い勝手の良いピックアップトラックを使うようになったのがSUVの始まりです。

ピックアップトラックがどうしてアウトドアスポーツをしに行く時に勝手が良かったのかというとそれはアウトドアスポーツというものは何かと荷物が多くなりがちでその大量の荷物を積むことができる積載能力を持っていたからです。
それもそのはずピックアップトラックは荷物を拾って(ピックアップして)投げ入れることができる平ボディの荷台を持っている荷物運搬車ですから荷物をたくさん積むのは得意中の得意とすることですから当然かもしれません。

キャンプだったら テント、タープ、マット、ストーブ、ランタン、バーナー、食料、飲料、着替え、遊び道具など
スキューバダイビングだったら マスク、シュノーケル、フィン、ウェットスーツ、水着、ウエイト、タンク、レギュレータなど
サーフィンだったら サーフボード、ウェットスーツ、ブーツ、着替えなど
ウィンタースポーツだったら スキー板、ストック、スノーボード、スキー靴、ブーツ、スキーウェア、着替えなど

といったような比較的サイズの大きなたくさんの荷物を4ドアセダンやステーションワゴンに載せて、なおかつ複数の仲間同士で行くことになることから4〜5人程度の人間もきちんと座れる車となるとピックアップトラックのダブルキャブ(2列シートの4ドアモデル)が最適だったのです。

ピックアップトラック ダブルキャブ 荷物満載

荷物満載のピックアップトラック

しかし、ピックアップトラックはあくまでも日本的にいえば商用車であって決して快適な車ではありません。
それこそアウトドアスポーツなどに出かけるとなれば長距離運転を強いられることになりますので、その影響は大きくなります。
そもそもピックアップトラックは荷物を運ぶ車ですので、乗り心地よりも重たい荷物をたくさん積んでもへこたれない固めの足周りや長期間使い続けても壊れない耐久性が求められるため、スプリングレートの高いスプリングを使用したリジットサスペンションなどが使われることが多いので、乗り心地はあまり良くありません。
そこでピックアップトラックをベースにしたもう少し快適性の良い車が必要になったのでした。

そして更にこういった要求もありました・・・それが悪路走破性です。
日本国内では仮にキャンプに行ったり、サーフィンに行ったり、ウィンタースポーツに行ったりしても設備は整い、そこまで行く道のりもほとんどが舗装路で、道が悪いと言ってもスキー場近辺の雪道やちょっとした砂利道程度でしょう。
しかし、アメリカは違います。
舗装が整っているのは都市部や幹線道路、ハイウェイだけで少しでもそういったところから外れてしまうと未舗装路が続くようになり、雨が降ればぬかるんだ泥道となります。
そして日本のように設備が整ったところではなく、それこそ未開のジャングルではありませんが、獣道のようなところを走ったり、砂浜を走ったり、除雪されていない深い雪道を走ったりしなければアウトドアスポーツを楽しむことができないのです。
そこでオフロードを走るために作られたクロスカントリー4WDモデルほどではありませんが、車高を高めてロードクリアラスを確保し、パートタイム4WDシステムやフルタイム4WDシステムを搭載した4WD、そしてオフロード走行にも対応出る外径の大きなオフロードタイヤが必要になったのでした。

そしてこれらの3つの要件を踏まえて「アウトドアスポーツも楽しむことができる多目的な車」として作られたのが、後に「SUV」と呼ばれる車だったのです。

    SUV」の・・・
  • Sは「Outdoor Sports(アウトドアスポーツ)」の「S
  • Uは「Utility(ユーティリティ・万能・役立つもの)」の「U
  • Vは「Vehicle(ヴィークル・車両)」の「V

で「Sports Utility Vehicle」・・・日本語で無理やり訳すと「スポーツ用多目的車」などとなりますが、この翻訳はかなり誤解を生む訳し方ですので日本語訳を使用するのではなくもはや「SUV」という単語を使った方がいいかもしれません。

SUVの定義

さて、ここまでSUVの生い立ちを見ていきましたが、この中でSUVというカテゴリーの車がどうあるべきか、どういったものがSUVなのかということがわかってきました。

SUVはラダーフレームをもっていなければならない

まず1つ目が・・・ ラダーフレーム をもっていなければならないということです。

ラダーフレーム

ピックアップトラックのラダーフレーム

SUVはあくまでもピックアップトラックの派生モデルでしかありません。
ピックアップトラックは荷物をたくさん載せて走るための車ですので、ちょっとやそっとのことでは曲がらない、ねじれないシャシーやフレームが必要で、それに適したフレーム構造が大型トラックなどにも使われているラダーフレームなのです。
ラダーフレームを使って作られているピックアップトラックベースなのですからSUVにもラダーフレームが使われていなければなりません。

SUVは高い積載能力をもっていなければならない

次に2つ目・・・それなりの 積載能力 を持っていなければならないということです。

荷物満載のSUV

ラゲッジスペースとルーフラックに荷物満載のSUV

そもそもピックアップトラックがアウトドアスポーツをしに行くとき使われるようになった最大の原因が荷物をたくさん積むことができるからでそれがなければきっとSUVなどなかったことでしょう。 さすがにピックアップトラックと同等レベルの積載能力がなければならないというのは現実的ではありませんが、少なくともキャビンの乗り込んだ人間の人数分の道具を無理なく積むことができるラゲッジスペースが必要です。

SUVはオフロード走行性能をもっていなければならない

そして最後の3つ目が・・・多少の オフロード走行性能 を持っていなければならないということです。

オフロード走行をするSUV

オフロード走行をするSUV

これは先程も言いました通り、アメリカではアウトドアスポーツにオフロード走行は欠かせません。
ただ、誰も走ったことがないような道なき道を走るほど過酷なオフロード走行まではしませんので、バリバリのオフロードマシンと同じくらいの性能までは必要ありません。
せめてスタンバイ4WDではないフルタイム4WDシステムが搭載されていて、ロードクリアランスがそこそこ確保されていればいいでしょう。

3つの定義をすべて満たしたものだけがSUVである

上記の3つの定義・・・

  • ラダーフレーム
  • 積載能力
  • オフロード走行性能

をすべて満たして初めて「SUV」と呼べるということがお分かりいただけたかと思いますが、それを理解したうえで現在発売されてる「SUV」として発売されている車を見てください。

何かおかしくありませんか?・・・そうです、そのほとんどの車が3つの定義をクリアしていないのです!
ひどい車ともなると全ての定義も満たしていません。

要するにSUVです!」と自動車メーカーが公言して販売している車のほとんどがSUVではないということです
これらの車が「SUV」として公然に売られているのですから驚きですし、そういったことがさも正しいことであるかのように広まってしまっているのには困ったものです。
では、具体的にどんな車がSUVと呼べるのか?・・・というのを具体的に見てみましょう。

SUVと呼べる国産車

2019年1月現在、国内発売されているモデルで正式に「SUV」と呼んでいいモデルは以下のものだけです。

自動車メーカー 該当車種
日産 該当車種なし
三菱 デリカD:5
トヨタ ランドクルーザー・プラド、LX
ホンダ 該当車種なし
マツダ 該当車種なし
スバル 該当車種なし
スズキ 該当車種なし
ダイハツ 該当車種なし

残念ながら国産車の中で「SUV」と公言していいのは、上記のたった3車種のみとなるようです。

ちなみに「あれ?あの車は・・・」と思われるような車は「SUV」ではなく、「クロスカントリー4WDモデル」や「クロスオーバーSUV」であることがほとんどです。
詳細は別ページ「SUVとクロスカントリー4WDとクロスオーバーSUV」をお読みください。

まとめ〜国産SUVのほとんどがSUVではない

ここまでのお話で、国産自動車メーカーが「SUV」として発売している車のほとんどがSUVではないことがお分かりいただけたかと思います。
当然ながら自動車を開発し、生産し、販売もしている自動車メーカー側の企業もそういったことを知らないわけがなく、知っている上でSUVではないものでもSUVとして販売していることになるわけで、早い話、消費者は騙されてSUVではない自称「SUV」を購入している可能性があるといえます。

自動車メーカー側が昔から行っている「消費者の知識の無さ」、「自動車に対する無知さ」をうまく利用した、なかば「騙し行為」となっている「パワースペック偽装」や公になっている「燃費偽装」、そして公になっておらず表に出てくることがない「裏燃費性能の存在」などといったものに加えて、この「間違ったSUVの概念」も偽装行為となるのではないでしょうか。

SUVだと思って買ったらクロスオーバーSUVだった!どうしよう・・・

このページを読んで、「本当のSUVってこうだったのか!」とご理解いただけたかと思います。
振り返ってみればだいぶ世間に惑わされていたことに気が付くと思いますが、中には悔い改めるだけでは済まない方もいるかもしれません。

  • 「SUVだっていうからその車を買ったのにSUVではなくクロスオーバーSUVだった!騙された」
  • 「多少のオフロード走行や雪道走行を考えて上でSUVを選んだのに、オンロード志向のクロスオーバーSUVだったなんて・・・」

などといったようにクロスオーバーSUVを買ってしまったことを悔やむ方悔やみを超えて怒りを覚えている方もいるかと思います。

そこまでいかなくても日常的にクロスオーバーSUVを運転している際・・・

  • 自動車の知識が豊富な方やカーマニアから冷たい視線を浴びる、白い目で見られる。
  • ランドクルーザー・プラドやデリカD:5に乗っている方に勝ち誇ったような顔をされる。

といったようなことをされてしまうのではこれから先、何年間も乗り続けることは地獄です。

それならばいっそのこと、その車を売って、本当のSUVを購入してみたらどうでしょうか。

ディーラーで下取りに出してもいいですが、下記のようなサイトを利用して対応の良い買取店を探してそこで売った方がより多くの購入資金を調達できると思います。

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執筆者・管理者

  • カー・エクスポーザー
  • 自動車酷論家
  • 自動車評論家@ダークサイド

発言に対する制限が掛かるのを嫌うため現在はどの団体にも属さないフリーとして活動。
Webサイト用記事、ゴーストライターとしての記事などを多数執筆

いわゆる自動車評論家やモータージャーナリストなどが忖度などの理由からはっきり言えないことをズバズバと発言し、自動車業界の裏の真実を暴露する。
また、自動車メーカーやメディアが何らかの理由で公言していることによって生まれた間違った風潮・知識、言葉の使い方、言葉の解釈に苦言を呈する。

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